休航による保険料の払戻し
休航戻しにかかわるクラブの方針
長期係船により保険料を払戻す「休航戻し」については、保険約款の第27条で規定していますが、その細目は管理者の裁量事項となっています。クラブでは休航戻し請求があった場合に、管理者が下記のガイドラインに沿って保険料の払戻しの可否や割戻し率を決定することとしています。
1.安全な場所での休航の証明
管理者が休航戻し請求を承認するには、船舶協会などのメンバーが手配した第三者の発行する証明書を必要とします。しばしば船体保険者も休航時にサーベイを手配しますが、クラブではこれらの書類も参考にします。ただし、第三者による証明が信頼できるものかどうかは管理者の裁量により判断いたします。
岸壁損傷や座礁あるいは船舶の全損といったリスクが軽減されるには、安全な係留は必須条件です。座礁船は多額の船骸撤去費用がかかることもあるからです。 |
保険料の休航戻しの原則
1.安全な場所での休航を証明すること
2.貨物の積載がないこと
3.再保険コスト以外の保険料を払戻し
4.乗組員の有無による返戻金額の違い
・乗組員無しの場合は90%の払戻し
・乗組員残留の場合は50%の払戻し
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2.最低30日の休航
保険料の払戻しの承認には、最低30日間は休航していることも条件となります。1週間程度の停船では払戻すことはできません。
最終係留した後、連続して係船した日数(到着日から発航日までの日数から1日引いた日数)が休航期間となります。
3.積載貨物のないこと
本船に積載貨物のないことも休航戻しの条件です。貨物とは保険約款上、B/Lに記載された物品のことです。例えばLNGガスのヒール(貯残)は船主所有物であるため貨物とはみなされません。
4.乗組員の有無による払戻額の変動
休航中に船員が船内に残るかどうかも払戻額の判断材料となります。保険約款上、船員とは当該船上にいるか否かを問わず、加入船舶上で勤務するために雇用契約を結んだ者ということです。船上に船員がいない状態で休航する船舶は、いわゆる「Cold Lay Up」と呼ばれ、P&Iリスクは軽減します。そのため船員の有無によって次のとおり払戻額が変動します。
・Cold Lay Up(船上に船員がいない状態)
保険料から再保険コストを差引いた金額の90%を、払戻しいたします。
・Hot Lay Up(船上に船員が残留する状態)
保険料から再保険コストを差引いた金額の50%を払戻しします。船員の数は概ね本船旗国の最小安全配員証書の下での最低必要人員の半数以下が目安です。
5.パーマネント雇用契約の船員
保険料払戻の際の判断においては、クラブが既に承認したパーマネント雇用契約(いわゆる24/7Contracts)の下で雇用された船員は、休航中に本船を離れ陸上にいる場合でも本船にいると見なされます。
このような雇用契約では船主は当該船員が本船を離れても、医療費や死亡・後遺症補償等の責任が残ります。クラブにとってこれらリスクがなくなるわけではないため、これら船員に対するリスクが続いている状態では、Cold Lay Upであっても90%の返戻率を適用できません。
6.日割り計算
休航戻しは年間保険料を日割りで算出します。休航中に船員の有無の異動がある場合でも、夫々の条件のもとで日割り計算します。
船員が断続的に船内に戻る場合、通常Hot Lay Upと見なします。
7.再保険コストの控除
保険約款上では、「再保険、組合管理費その他管理者が随時決定する支出金に対する引当て分」はクラブに留保することを認めています。2009保険年度は、国際グループの再保険コストを留保の対象といたします。
8.払戻額の算出方法
1.日割計算の対象となる休航期間の日数を算出
2.年間保険料から再保険コストを控除
3.90%あるいは50%の返戻率を適用
最後にクラブに対する未払保険料やその他未払金の有無を確認します。
乗組員リスクの有無による違い
当クラブでは、休航中の乗組員の有無により休航戻しのタイプを分けて考えています。船内に乗組員が残留している場合は、乗組員の傷病あるいは死亡事故に対するメンバーの責任は継続しているからです。
近年、船員契約上の補償条項で、本船が休航中でも船員の医療費や傷病リスクはあまり変わらないものがあります。
船員クレームが貨物クレームの金額を超えるメンバーが増加していることは、貨物クレームが大半を占めていた10年前には考えられませんでした。船員クレームのコストが上昇している中、積載貨物の有無だけで保険料払戻しの査定をすることは
不合理といえるでしょう。
さらに休航中に残る船員は保守や修理をすることがありますが、これらの作業に伴うリスクは通常の運航業務より高くなります。
数人の乗組員のみで安全な港で係船する場合、P&I保険料の払戻しを受けることができますが、本船の旗国が規定する最低必要人員の半数以上の船員が船内に留まる場合、休航と認めることができません。
そのため、クラブは、保険料払戻の査定にあたり、払戻し基準に合致しているかどうかを確認するため、残留乗組員の行動、業務などについてお尋ねする場合があります。
岸壁及び浮遊物との衝突リスク
休航中も衝突のリスクは継続します。船型が大きくなったことで、衝突の危険も以前に比べて増しているという見解もあります。
このことから、休航戻し請求の際に安全な係船であることの証明を提出していただくようメンバーにお願いしています。このような証書は、サルベージ協会あるいは船級協会が発行しますが、船体保険者も同様の証書を必要とすると思われます。
お支払いいただいた保険料の払戻し
休航期間の長さにかかわらず、メンバーはまず保険料をお支払いいただき、その上で休航戻しをお返しいたします。
休航期間が保険年度をまたぐ場合でも、この原則は変わりません。そのため新年度の保険料率にあらかじめ返戻率が適用されることはありません。
定期用船者あるいは固定保険料契約者
定期用船者あるいは固定保険料契約者に対しては、休航戻しの適用はありません。用船者は休航中の船舶の保険契約を解除することが選べますし、船舶を安全に係留する責任は全面的に船主側にあって用船者にリスクは残らないと判断することもできるからです。
休航6ヶ月後の特別検査:休航終了の通知
休航戻しの規定(保険約款第27条)には記載されていませんが、休航期間が終了し再就航するときには保険約款第5条(R)に基づき、検査が求められることがあります。同条項では、クラブに加入しているかどうかにかかわらず、6ヶ月以上係船していた船舶を対象に適用され、当該船舶が係留地を離れる7日前にクラブへ事前連絡をしなければなりません。特別検査を実施するか否かはクラブの裁量で決定します。
よくある質問
Q1. 休航による保険料の払戻しはいつ請求するのですか?
2月20日に休航中の船舶は、保険年度末に一度ご請求ください。その他は休航終了後にご請求ください。休航中に保険料の一部をお返しすることはできません。
少なくとも、翌保険年度が6ヶ月経過するまでに、ご請求ください。つまり、2009年2月20日から2010年2月20日の間に休航期間があった場合には2010年8月20日までにご請求いただくということです。
保険年度終了までに休航期間が終了した船舶に対する保険料の払戻しは、通常翌年12月が支払期日でまだ期日の到来していない4回目の保険料に適用いたします。
Q2. 4回目の未払い保険料にどのように適用するのですか?
通常、保険料は4回払いで最初の3回は当該年度内にお支払いいただきますが、4回目の支払期日は翌年12月です。定義上、保険年度内に休航期間が終了した船舶は、4回目の保険料が未払いとなっていることになります。
クラブの方針としては、保険料の休航戻しは、既に請求済でまだ支払期日の到来していない4回目の保険料と相殺することとしています。そのため、もし4回目の未払保険料が払戻金額を上回っていれば、12月の支払期日に差引き保険料をお支払いいただき、4回目の保険料と同額であれば翌年12月にお支払いただく必要はなくなります。
UKクラブ 2009年度保険約款
第27条 休航戻し
契約条件に従い、加入船舶が最終係留後連続30日以上(到着日から発航日までの日数から、一日を控除して期間を計算する)貨物を積載せずに同一安全港又は場所において休航したときは、船主は、かかる船舶の休航期間につき、支払保険料額から再保険、組合管理費その他管理者が随時決定する支出金に対する引当て分を差し引いた残額に一定の割合で計算した保険料の払戻しが認められる。ただし、オーバースピル保険料については休航戻しはしない。
本条の目的上、
a. 管理者は、休航する港あるいは場所が安全な港あるいは場所であるかどうかを本約款の主旨に照ら
し、その裁量で判断するものとする。
b.保険年度終了後6ケ月以内に組合に書面による通知をしないかぎり、組合はその年度に係わる休航戻
しの請求に応じない。
Q3. 休航中にクレームが発生したら?
休航中も、それまでの本船の加入条件及び保険約款に従いP&I保険のてん補は継続されます。しかし、クレームの種類によっては、当該船舶は安全な係船ではなかった、あるいは休航戻しの諸規定に沿っていなかったと判断するかもしれません。例えば、クラブが船員クレームをてん補する場合は、当該船舶は船上に乗組員のいない場合に適用される90%の保険料払戻はありません。あるいは、休航中に係留がはずれ高額の船骸撤去費用が発生した場合、船級協会の意見や係留検査などを含め、「安全な休航」であったかどうかを査定し直す必要があります。
Q4. 保険年度をまたいで休航したら?
本船が2008年度から2009年度にかけて休航した場合、2008年度の休航期間については2009年度開始から6ヶ月以内に休航戻し請求をしていただきます。保険料の払戻しは2008年度の保険約款の返戻率で計算いたします。2009年度保険約款および本ガイドラインでご説明した諸規定は、2009年2月20日以降の休航期間に適用されます。
UK P&I クラブ 日本支店